現代のビジネス環境では、業務の複雑さと相互接続性から、サードパーティ・ベンダーとの提携が必要になることが多い。このような関係は、効率性を高め、サービス提供を強化する上で有益である一方、組織が見過ごすことのできない無数のリスクをもたらす。このような外部との関係がもたらす潜在的な脅威を認識し、包括的なリスクマネジメント戦略の重要な要素として、サードパーティリスクマネジメント(TPRM)の重要性が強調されるようになってきている。この焦点は、サードパーティへの依存から生じるリスクを軽減するために、組織が積極的な対策を採用する必要性を強調している。
このような状況では、エンタープライズ・リスク・マネジメント(ERM)チームの役割が最も重要になる。ERMの専門家は、オペレーショナルリスク、財務リスク、リーガルリスク、レピュテーションリスクなど、リスクマネジメントの原則を幅広く深く理解している。ERMの専門知識は、TPRMの取り組みを指導・支援し、その取り組みが組織全体のリスク管理目標と整合していることを確認する上で、非常に貴重である。ERMチームは、その知識を活用することで、戦略的方向性、リスク評価手法、サードパーティリスクを管理するためのフレームワークを提供し、TPRMプログラムの有効性に大きく貢献することができる。
ERMとTPRMの区別
ERMとTPRMはどちらもリスクマネジメントの傘下にあるが、それぞれの違いを理解し、どのように補完し合うかが重要である。ERMは、戦略リスク、オペレーショナルリスク、取引リスク、風評リスクなど、組織に影響を与える様々なリスクカテゴリーを考慮する包括的なアプローチである。その主な焦点は、組織全体のリスクを特定、評価、管理し、リスク選好度を設定し、特定されたリスクを軽減する戦略を実施することである。
一方、TPRMは、サードパーティーベンダーやパートナーに関連するリスクに特化している。TPRMでは、ベンダーの財務的安定性、業務能力、情報セキュリティ慣行、規制の遵守、組織のリスクプロファイルへの潜在的影響を評価する。TPRMの狙いは、組織がサードパーティに依存することで許容できないリスクが生じないようにし、特定された脅威を緩和するための効果的なコントロールが実施されていることを確実にすることである。
TPRMをより広範なERMのフレームワークに統合することにより、組織はサードパーティリスクをより包括的かつ統合的に管理することができる。この統合されたアプローチにより、TPRMの取り組みが組織全体のリスクマネジメント戦略と整合し、両分野の有効性が高まる。
ERMリーダーがTPRMを強化する方法
ERMチームとTPRMチームの連携は、サードパーティーリスクの管理を成功させるために極めて重要である。ERMリーダーは、組織のリスク状況を総合的に把握し、いくつかの重要な方法でTPRMイニシアチブを支援することができる:
- 戦略的ガイダンスERMリーダーは、TPRMプログラムの方向性、目的、リスク許容度を定義し、組織全体のリスク管理方針と戦略との整合性を確保することができる。
- リスク管理のフレームワークERMリーダーは、包括的なリスクマネジメントのフレームワークを確立することにより、第三者リスクの体系的な特定、評価、軽減を可能にする。これらのフレームワークは、TPRMをより広範なリスクマネジメントの取り組みに統合することを容易にし、一貫性と効率性を促進する。
- ベンダーのリスク評価手法ERMリーダーが開発した独自のリスク評価方法論は、第三者のリスク評価の正確性と信頼性を高め、情報に基づいた意思決定を可能にし、組織のリスク選好度との整合性を確保する。
- 情報の共有とコラボレーションERMリーダーは、TPRMチームと他のリスクマネジメント部門との間で、コラボレーションと知識交換の文化を醸成することができる。これにより、組織全体のTPRMの取り組みの有効性が高まる。
- モニタリングと報告ERMリーダーは、TPRMの有効性を評価するための主要業績評価指標(KPI)と評価基準の定義に尽力する。上級管理職と取締役会に定期的に報告することで、TPRMイニシアチブへの継続的な支援と資源配分を確実にする。
組織がサードパーティリスクの管理という課題に取り組む中で、TPRMを強化するERMの役割は、いくら強調してもし過ぎることはない。ERMリーダーは、戦略的ガイダンス、フレームワーク、方法論、コラボレーションの機会、モニタリングのサポートを提供することで、組織がサードパーティリスクを効果的に管理できるようにする。この協力的なアプローチは、組織のリスク管理能力を強化するだけでなく、第三者との関係に潜む落とし穴を防ぎ、より強靭で安全な業務環境を確保する。